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万福寺のあゆみ  
万福寺の歴史と民俗

  各農家の「山印」

山印の成立と市場での役割
 

「山印(やまじるし)」とは各農家が様々な農産物を出荷する際、荷に印をつける出荷者名の略称のことであるが、市場ではヤマジルシを「荷印」と呼ぶのが一般的のようである。
東京の市場関係者間の言葉で「西山(にしやま)」という言葉があるが、これは東京の方から見て、西の方角にある生産地をさす呼び名であり、また農家を巡回して集荷することを「山まわり」と呼んでいる。
山印の語源もこの辺りの事情から発祥したものと思われる。この山印という呼び名がいつ頃から用いられたのかは不明だが、市場出荷の際に使ったことに限れば、農産物が市場で販売されてからということになり、農業生産が一定の軌道にのった明治の後期以降ということになる。
しかし、山印は市場出荷の印以外にも、「屋号」や「商標」のように使用されている場合もあり、多摩区や麻生区の農家の中には両用又は混用している例もある。
この場合には山印のなりたちも江戸時代にまで遡ることになる。市場出荷の時に山印は大きな役割を果たした。出荷者名が簡略化され、記録や表示、場内で出荷者名をよみ上げる際にも短時間で簡単に進行できた。
また、事務処理上の便利さだけではなく、長い歳月に渡り山印を使用してきたことにより、競人や仲買人等が荷を評価する基礎となり、生産農家の信用を表わす重要な役割を持つに至ったのである


山印のかたちと種類
 

山印を絵形で分けると、文字だけのものと、絵と文字を組み合せたものと二つに分類される。
文字による山印の場合は、文字の書体にはそれほどこだわらずに楷書体が多いようである。文字の表現は開設時の山主の名前から一字を採って使う場合が殆どである。
姓(苗字)を使う例は近年は増えているが、以前は少なかったという。文字だけの山印は端的でわかり易く、地名の一字を、名を表わす文字の上に重ねて配置できるという特徴を持つ。
絵と文字を組み合せた絵形による山印は数も種類も多いが、よく使われる形には次のようなものがある。「曲尺(かねじゃく)」―曲尺は一般の商標にも使われ、山印の場合も数が多い。曲尺は大工や指物師が使う物差しのことで、メートル法に切り替えられるまで使われていた。形が直角に曲がっているため曲尺の名が付けられたという。
形は律儀さを表し、通常カネ形は文字の右に配置するが、左へ置いた形もみられる。「山(やま)」―山形を使用した商標は極めて数が多く、麻生の山印もこの形が一番多い。山形は左右対称で形が安定していて美しく、その泰然とした姿は気高さを表わすと同時に親しみを感じさせる。山形の種類は多いが、主なものは次の三つに分けられる。
〈山形(やまがた)〉一つ山形とも言い、ごく普通の山の形をとる。山形の殆どがこの形である。
〈入り山形(いりやまがた)〉二つの山が重なり、重なる裾の部分が内側に入っている形をとる。
〈出山形でやまがた〉二つの山が重なり、重なる裾が外側に出る形をとる。また、山形にはこの他に、〈花山形〉、〈違い山形〉などがある。〈輪(わ)〉丸型とも言い、輪の形は山印でも一般的で数が多い。
紋章に使用する例も非常に多い。形がとり易く単純で、安定感と力強さを併せ持つ。輪形は輪の太さにより分けられ、一重の輪だけでも太輪、丸輪、中輪、細輪、糸輪など八種類もあるが、通常は山印をはじめ、商標などには丸輪が多く使われている。

 

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